キーワード 初級文法、良いドリル(稽古)、現実に近いドリル、効率、横田めぐみ 講 義 概 要 どんな教授法(教え方の哲学や方法)にも、どんな教科書にも長所と短所があります。要は、様々な教授法や教科書の長所をなるべく多く利用しながら自分の授業を学習者とともに作り上げていくことです。 そのためには、何が長所で、何が短所なのかを理解しておかなければなりません。特に長所とは何かを知っておくことが肝要です。 他人の教科書の粗探しばかりしていても話になりません。例えば、語学学習の命であるドリル(稽古)に関していえば、機械的な形の練習だけでなく(これも重要です)、より現実に近い状況や会話の十分な練習があれば長所と言えます。また、500年、1000年前の古語の活用体系に現代日本語の活用を無理やり押し込めた矛盾だらけの学校文法では未だに「四段活用」とか「一段活用」とかいう用語が出てきます。このような用語を鵜呑みにしている箇所は短所です。 しかし、教科書がなければ授業ができないというような教科書至上主義も間違いです。教科書やプリントに頼って学習者がずっと下を向いているような授業は駄目です。外国語授業の基本は学習者ひとりひとりの目を見ながら徹底的に聞いたり話したりする実践的な稽古をすることです。勿論、読み、書きの訓練も取り入れながら。日本語の初級文法に焦点を絞り、(教師のための)実践的な文法整理と、(学習者のための)効果的なドリルの紹介やシミュレーションを行います。初級文法を含む幅広い知識を吸収しようと努力する向学心豊かな外国語教師を目指す人、日本語の初級文法を一般教養として勉強したい人だけ受講してください。 到 達 目 標 ある言葉が母語としてぺらぺら話せることと、その言葉を外国語として学習する人に体系的、説得的に教えることのできる能力とは別物です。 一定の制限された状況(教室)や時間内(初級の集中コースとして例えば週15時間で約6か月)に、日本語を母語としない人に日本語文法全体の基礎的な体系を順序よく説得的に説明し、効果的に練習(ドリル)を行い、「使える日本語」を身につけてもらうためには、教える側に特別の知識と技術が必要となります。その知識と技術を身につけます。初級レベルで学習者が興味を失ってしまったら、それまでです。ある意味では初級レベルが最も難しいと言えます。 文法の質問から逃げる日本語教師は学習者には信頼されません。初級日本語文法の知識を身につけます。 「何故、私は外国語を学ぶのか?何故、私は日本語を外国語として教えるのか?日本語を教えるという仕事を通して私には何ができるのか?」という問いを問い続けなくてはなりません。このような主体的な問題意識を身につけます。 授 業 計 画 第1回:受身の「ラレ」(尊敬の用法も含む)の文法 | 第2回:使役「サセ」、使役受身「サセラレ」の文法 | 第3回:「日本語文法の特徴」の箇所の中の、passive (受身)、viewpoint(視点)の文法 | 第4回:条件表現の「S1とS2」、「S1たらS2」(途中まで)の文法 | 第5回:条件表現の「S1たらS2」、Related expressions、「S1ならS2」(途中まで)の文法 | 第6回:条件表現の「S1ナラS2」、「S1レバS2」の文法 | 第7回:規則的な尊敬表現「お〜になる」、基礎的な謙譲表現「お〜する」の文法 | 第8回:「日本語文法の特徴」の中のPoliteness and Formality、規則的な尊敬表現「お〜になる」の文構造、 | 皆さんの先輩で国立アイスランド大学で日本語を教えている永井真美さんのビデオなど | 第9回:「日本語文法の特徴」の中のPoliteness and Formality、規則的な尊敬表現「お〜になる」と規則的な謙譲表現「お〜する」の文構造 | 第10回:「日本語文法の特徴」の中のWord Order (基本語順) | 第11回:「日本語文法の特徴」の中のTopics(主題)、Personal pronouns (人称代名詞) | 第12回:「日本語文法の特徴」のSound Symbolisms(擬声語、擬態語) | 第13回:「日本語文法の特徴」の中のExtended Sentential Unit(ESU; 構造的一塊) | 第14回: まとめ(1) | 第15回:まとめ(2) |
評 価 方 法 その他:100% 講義中に自筆でノートをとってください。この自筆ノートは、皆さんが将来、日本語教師となって教壇に立った時に必ず役に立つ参考書となります。 この世界に一冊しかない、あなただけの参考書を作って下さい。 毎回提出の自筆授業ノートの質、量、提出具合で評価。自筆でのノート取りは基本の基。 ここは剽窃援助システムChatGPTも無能となる場所。基本の基で評価します。 授業の方法 対面 『講義』 オフィスアワー M-Portクラスプロファイル内[授業Q&A]より質問してください。 参 考 書 三浦昭(1983)『初級ドリルの作り方』凡人社 岡崎敏雄(1989)『日本語教育の教材-分析・使用・作成』アルク Makino, S. and Tsutsui, M. (1986) A dictionary of basic Japanese grammar-日本語基本 文法辞典. The Japan Times. 備 考 本学には世界の様々な国から留学生が来て日本語や日本文化について勉強しています。 留学生の人たちと話をしてみてください。 特定の教員に「授業内容を説明して」と質問された場合、皆さんが説明する義務はありません。 授業を聞いただけで授業内容を説明できなくて当然。皆さんが授業ノートを取りながら懸命に 勉強する。時々、自分で復習する。それで十分です。もし、そのような質問にストレスを感じた 場合、本学のハラスメント委員会、または、私に相談して下さい。 毎回の講義の録画データをM-Portにアップします。自筆ノートの補正に利用してください。 |