本授業では、世界および日本の様々な地域に注目して「地域社会」を論じる。地域社会とは人が生活を営む場所のことを指す。日本では地域社会のことを学ぶ「地域社会学」が社会学の下位分野として存在する。地域社会には、生活が営めるように管理し、維持している組織や制度があり、そこでは人がまじりあって暮らしている。なぜ「都市」社会学でも、「農村」社会学でもなく、それらを横断するような「地域」社会学という学問分野ができたのかというと、1960年代末頃からの、高度成長に伴う広範な都市化のなかで、「都市と農村の区分」が自明なものではなくなったからである。そのため、都市や農村を越えて「地域」、すなわち、人々が生きる空間、を論じる学問分野が必要であるといわれるようになった。では、地域社会は時代とともにどのように変化してきたのであろうか。「地域社会」の中には都市部である場合も、農村部である場合もある。そこで営まれる生活も時代や場所によって異なっている。本授業では、歴史的に「地域社会」がどのように変化していったのかを論じる。日本を中心にするものの、世界各地の事例を論じる。これらの事例を通じて「地域社会」における人々の営みについて理解することを目指す。
| 第1回 導入 |
| ・授業の目標、進め方、評価方法について |
| ・授業における注意点 |
| 予習内容:シラバスを事前に読み、授業内容や授業の進行方法についてあらかじめ把握する(60分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える(120分) |
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| 第2回 地域社会とは何か―この授業では何を勉強するのか― |
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| ・北川由季彦(2018)「都市・地域・コミュニティ」森岡清志・北川由紀彦編『都市と地域の社会学』放送大学教育振興会、9-20頁。 |
| ・竹沢尚一郎 (2017)「共同体-人はなぜ共同体を求めるのか―」友枝敏雄・竹沢尚一郎・正村俊之・坂本佳鶴恵編『社会学のエッセンス』有斐閣。 |
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| ・地域社会とは何か |
| ・都市とは何か。 |
| ・コミュニティとは何か。 |
| ・国家が地域社会を解体する-国家/家族/コミュニティの関係を考える- |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第3回 世界人口の変化とコミュニティの変化 |
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| 平野克己 (2022)『人口革命』朝日新聞出版社(第1章 人口革命と人口転換、7-38頁)。 |
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| ・人口規模がコミュニティのあり方を変える。 |
| ・技術により人口は変わる。それにより生産形態や統治形態も変わる。 |
| ・かつて集落は、陸地に浮かぶ島だった。そうした状況が都市の誕生、移動技術の発展によって変わってくる。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第4回 日本の農村はどのように変化してきたのか |
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| 速水融 (2022)『歴史人口学で見た日本』文春新書(四章 虫眼鏡で見た近世―ミクロ資料からのアプローチ―、81-144頁。 |
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| ・「自然村」という概念の嘘 |
| ・いかに現代日本の農村の風景が作られたのかを歴史的に考える。 |
| ・生産形態が農村の形を変えてきた。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第5回 都市とは何か、都市化はどのように生じるのか |
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| 藤田弘夫 (1999)「序章 都市社会学の方法と対象」藤田弘夫・吉原直樹編『都市社会学』有斐閣、1-19頁。 |
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| ・都市とは何か。 |
| ・都市にはどのような特徴があるのか。 |
| ・日本ではどのように都市が発展してきたのか。 |
| ・日本における働き方はどのように変わってきたのか。 |
| ・働き方が変わることによって日本人の生活はどのように変わってきたのか。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第6回 近所付き合いを考察する |
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| ・福井勝義「近所づきあいを支えるもの」(2000) 福井勝義編『近所づきあいの風景―つながりを再考する―』昭和堂、5-19頁。 |
| ・「総合討論―豊かなつながりを想像する―」(2000) 福井勝義編『近所づきあいの風景―つながりを再考する―』昭和堂 。 |
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| ・コミュニティとはどのように実体験されるのか。コミュニティに生きる人々にとってコミュニティとは何か。 |
| ・人の移動が少く人口が少ない農村におけるコミュニティ |
| ・流動性が高く、メンバーが一定ではない都市のコミュニティ |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第7回 相互扶助を考える |
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| ・田中世紀 (2021)『やさしくない国ニッポンの政治経済学』講談社(第1章他人を信頼しない日本人25-36頁、日本人の社会参加60-72頁)。 |
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| ・日本人は他人にやさしいのか。 |
| ・親族を助けない日本人。お金を課さない日本人。 |
| ・「自助」「共助」「公助」 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第8回 地域の助け合い |
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| ・松村圭一郎 (2017)『うしろめたさの人類学』ミシマ社(第三章 関係――「社会」をつくりだす) |
| ・戸田美佳子 (2017)「カメルーン熱帯雨林に暮らす障害者からの学び」『作業療法ジャーナル』51 (3)、231-234頁。 |
| ・猪瀬浩平 (2017)「農業でもなく、福祉でもなく-<郊外>となった場所を/で<分解>する-」『社会福祉学研究』14、37-49頁。 |
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| ・必要な人に対する支援はどのように提供されるのか。「自助」「共助」「公助」を日本とアフリカの例から考える。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第9回 コミュニティを運営する |
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| ・水野広祐 (2006)「夜警と夜回り─ジャカルタにおける住民による安全確保とコミュニティ─」『アジ |
| ア遊学』90、106-116頁。 |
| ・久納源太 (2020)「ジャカルタにおける新しい日常の経験―住民組織のロックダウン―」京都大学東南アジア地域研究研究所、6月1日、https://covid-19chronicles.cseas.kyoto-u.ac.jp/post-037-jp-html/ |
| ・宮本常一 (1985)『忘れられた日本人』岩波書店(pp. 11-58)。 |
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| ・コミュニティはどのように運営されるのか日本とインドネシアの事例から考える。 |
| ・コミュニティはどのように機能するのか。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第10回 近所付き合いの風景――ゲスト講師の招聘 |
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| (未定) |
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| ・文献は未定です。ゲスト講師を招聘し、海外における近所付き合いのあり方を紹介してもらう予定です。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第11回 つきあいを保つ |
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| ・「小川さやかに学ぶ 借りのない「借り暮らし」」 #1-#3 https://karigurashi.net/ours/ogawa-01/ 他 |
| ・高橋昭雄 (2012)『ミャンマーの国と民―日緬比較村落社会論の試み―』明石書店(私的村落経験から見た日本とミャンマー、97-128頁) |
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| ・日常生活における人々の付き合い方を考える。今回取り上げるのは、タンザニアの都市における路上商人と千葉県の農村である。 |
| ・「貸し借りを作る/返す」、「お世話になる」とはどういうことか。人とどのように付き合うのか。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第12回 自然災害とコミュニティ |
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| ・望月美希(2019)「震災復興における地域コミュニティの問い直し」テッサ・モーリス=スズキ、吉原直樹編『応答する〈移動と場所〉―21世紀の社会を読み解く』ハーベスト社、150-169頁。 |
| ・松本行真 (2020)「思考範型としての「防災」を問う-「社会対応論」構築に向けた一考察-」『混沌(近畿大学大学院総合文化研究科紀要)』17号、103-119頁。 |
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| ・日本における災害の助け合い |
| ・「あるけどない」コミュニティはどのように機能するのか(機能しないのか)。 |
| ・コミュニティが「ない」中での災害対策とは何か。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第13回 社会は危機にどのように立ち向かうのか |
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| ・宮台真司 (2014)『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』幻冬舎(第二章 心の習慣、83-104頁)。 |
| ・岡野英之(出版予定)「「防災」に活用されたコネとカネ―西アフリカ・エボラ危機2013-2016からの試論-」松本行真編『災禍の民衆知と避難行動の比較分析』東信堂(出版作業中)。 |
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| ・コミュニティが「ない」日本において災害時に何が起こったのか。 |
| ・自然災害を「人災」に変えるのは、組織や個人である一方、考え方でもある。 |
| ・人々の考え方は災害対応にいかなる影響を与えるのか。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第14回 凋落する日本の中で個人はいかに生きるべきかー国家・コミュニティ・個人- |
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| ・松村圭一郎『暮らしのアナキズム』ミシマ社(第五章 アナキストの民主主義論、138-185頁)。 |
| ・谷脇栗太 (2022)「私たちは災害とどう向き合うのか。「災害復興学」の視点から、コロナ・パンデミックを考える」月と窓、9月2日、https://tsuki-mado.jp/85/ |
| ・「【歴史から学ぶ】2023年を生きる4つのヒント」News Picks, 2022年12月30日アップロード、 |
| https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=OpUiJQMFJ4U&fbclid=IwAR2q-u78jiZQyHTeAwkzITZcci9Fci3VPiOLEP4pzdVCsv_3uSn55j7rAmg |
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| ・日本は将来、人口が減り、GDPは下がり、貧困化はさらに加速することはほぼ確定している。その中でいかに個人が生きるべきか。日本のコミュニティの歴史や、海外の事例に基づいて考える。 |
| 予習内容:課題文献を読み、事前課題を作成する。(120分) |
| 復習内容:講義ノートを整理したうえで、事後課題に答える。(120分) |
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| 第15回 まとめ |
| 予習内容:授業全体を復習し、まとめに挑むこと。(120分) |
| 復習内容:授業全体を振り替える。ほぼすべての人が間違いなく成長し、老いることになります。その上で、自分個人が将来、どのようにコミュニティや国家と関わるべきかを考えること。(120分) |
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| 期末試験 |