比較行動学とは、行動の生物学である。比較行動学では、動物が行う様々な行動に注目することによって、その動物の進化的背景、生息環境、生活史、認知能力、社会構造などを解明していく。本講義では、様々な動物の行動に焦点を当て、ヒトとの類似点や相違点を学ぶ事によって、ヒトの行動に関する生物学的理解を深める。
第1回 比較行動学とは |
比較行動学とは、行動の生物学であって、ヒトを含む動物の行動や生き様を解明する学問であることを解説する。 |
予習内容:動物園動物やペット動物など、身のまわりの動物の行動を観察してみる。(60分) |
復習内容:配布資料を見直し、進化という現象について十分な理解を身に着ける。(60分) |
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第2回 行動観察の方法 |
野生動物の行動を観察し、記録し、分析する方法を解説する。 |
予習内容:動物園動物やペット動物の行動を観察し、対象とした動物がどのような行動を行っていたかを記録する。(60分) |
復習内容:今回の講義で学んだ方法を用いて、動物の行動を観察・記録する。(60分) |
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第3回 ティンバーゲンの4つの問い |
その動物は「なぜ」その行動をとるのだろうか?行動を説明する4つの理由について解説する。 |
予習内容:ヒトや動物の行動を1つ挙げて、その行動をどのように解釈することができるか、できるだけ多角的な視点から考察する。(60分) |
復習内容:授業内容を踏まえ、ヒトや動物の行動に関して、ティンバーゲンの4つの問いという観点から考察する。(60分) |
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第4回 集団生活の利益とコスト① |
動物が集団生活をすることによって生じる利益とコスト(損失)について霊長類を中心として解説する。 |
予習内容:集団で生活する動物、しない動物にはそれぞれどのようなものがいるのか調べておく。(60分) |
復習内容:今回の授業内容をもとに、ヒトやヒト以外の動物の具体的な行動に関して、利益とコストは何かを考察する。(60分) |
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第5回 集団生活の利益とコスト② |
霊長類以外の動物を対象として、行動に伴う利益とコスト(損失)について解説する。 |
予習内容:海で生活する動物のうち社会性を持つ種にはどのようなものがあるか調べておく。(60分) |
復習内容:利益やコストが、行動にどのような影響を与えるの配布資料をもとに復習する。(60分) |
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第6回 社会的知性① |
霊長類を中心として、集団生活と社会的知性の関係について解説する。 |
予習内容:「賢い」とされる動物には、他にどのような特徴があるのか考える。(60分) |
復習内容:配布資料を参考にして、社会脳仮説について十分な理解を身に着ける。(60分) |
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第7回 社会的知性② |
霊長類以外の動物に社会的知性がどの程度備わっているのかを考える。 |
予習内容:霊長類以外では、どのような動物の知能が高いのか調べておく。(60分) |
復習内容:配布資料を参考にして、社会性と知性の関連についてまとめる。(60分) |
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第8回 出産 |
様々な哺乳類における生活様式が出産に及ぼす影響について解説する。 |
予習内容:ヒトの出産にはどのようなリスクが伴っているのかを調べておく。(60分) |
復習内容:配布資料を見直し、離巣性と就巣性における生活様式の違いについて復習しておく。(60分) |
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第9回 母親の子育て |
哺乳類の母親による子育ての柔軟性について解説する。 |
予習内容:母親が子育てをする動物、しない動物にはそれぞれどのようなものがいるのか調べておく。(60分) |
復習内容:配布資料を見直し、母子間の葛藤がなぜ生じるのかを復習しておく。(60分) |
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第10回 母親以外の個体による子育て |
母親以外の個体が子育てを行う条件について解説する。 |
予習内容:父親が子育てに貢献する動物にはどのようなものがいるか調べておく。(60分) |
復習内容:配布資料を見直し、血縁選択仮説がどのような理論であるのかを復習し、理解しておく。(60分) |
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第11回 他者の認識 |
他者の存在を感じ取り、さらに個体による違いがあることを動物がどのように感じ取っているのかを解説する。 |
予習内容:他者を識別することができない場合、どんな困難が生じるのか考える。(60分) |
復習内容:講義内容を踏まえ、ヒトを含む霊長類がどのような手掛かりによって他者を識別するよう進化してきたのかを考える。(60分) |
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第12回 発達 |
霊長類において、個体がどのように育ち、そして老いていくのかを解説する。 |
予習内容:ヒトの子どもの各発達段階における社会的能力について調べておく。(60分) |
復習内容:配布資料を参考にして、コドモ期が一部の動物に存在する進化的な意義を考察する。(60分) |
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第13回 攻撃行動と親和的行動 |
動物がどのように攻撃行動と親和的行動を行っているかを解説し、その進化的な理由を考察する。 |
予習内容:普段の生活の中で、どのような相手と親しい関係を築いているのかを考察する。(60分) |
復習内容:配布資料を見直し、仲直り行動が生じるメカニズムがどのようなものか復習しておく。(60分) |
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第14回 他者の心の理解 |
ヒト以外の動物が、どの程度他者の心を理解することができるのか解説する。 |
予習内容:動物園動物やペット動物の個体間社会交渉を観察し、対象動物がどの程度相手の意図や感情を理解して行動しているのか考察する。(60分) |
復習内容:配布資料などを参考にして、心の理論とはどのようなものか十分に理解しておく。(60分) |
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第15回 進化と適応に関する総括 |
これまでの授業を振り返り、動物の様々な行動の進化について議論を行う。 |
予習内容:これまでの配布資料を見直し、行動が進化するメカニズムについて理解しておく。(60分) |
復習内容:一連の授業で学んだ進化の理論が、どの程度ヒトの行動にあてはまるのかを考察する。(60分) |
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定期試験 |
行動の進化的な理由について考察してもらう。 |
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